午後になってから、くろは鼻水で悩まされるようになりまた涙もよく溜まるようになった。鼻が詰まって時々くしゃみをし、また鼻づまりが辛そうにしているのを見ていると、『このまま悪化して苦しむようだと、安楽死を選択しなければいけないのかもしれない』とまた頭によぎり始める。
そう思ってる矢先、あくまでも、自分自身の力でトイレに行こうとするくろの姿を目撃してしまう。自分のその考えを感付いたのかわからないが、これでくろの意思を理解してしまう。生への飽くなき執着、猫としての尊厳を保ちたいという思いがこの姿から感じられた。まだ今は生きたいという意思を明らかに表示していると思い直した。
しかし日増しに体が衰弱し、常に介護してあげないとだめな状態になりそうなので、すぐ対応できるように今晩からは近くで寝るための準備をした。
床は痛いのでクッションに出来そうなあらゆるものをかき集めて特製ベッドを用意した。
高いトイレがもう無理なので低いものを特製BOXの前に持ってきて楽になるような工夫もする。
そうこうしてるうちに、トイレをしたいようでBOXから出てきたのだがそのまま倒れてしまった。
今回用意したトイレに入りそうになったのだが倒れてしまったので、手助けをしてそこで用を足せるように頑張ってみたもののやはりしない。向こうのトイレなのかなぁと思い直し、今回は抱きかかえていつものトイレ前まで連れて行った。
トイレできるように、前足を砂の上に置いてあげて用を足せるように手伝ってみたもののしないのでまたしばらく様子を見ることに。
5分ほど過ぎたあたりだったか、なんとトイレの段差を自分で乗り越えてしっこをしているではないか。
すごいとしか言いようがない。終えたあと、流石に体力は尽きたとみて抱きかかえてトイレから救出した。
今日まで、旅立つ準備をしているのか病気を治すための絶食なのか判断が付かずに、「冷やす努力」を避けてきたのだが、氷系はそのまま死んでしまい兼ねないのでペットボトルに水を入れてベッドの奥においてあげた。
冷たさを望むなら(すなわち、旅立つ準備の意思表示)この奥のペットボトルに横になるし、望んでいないのであれば避けて寝るだろうという選択肢を用意した。
くろは自らのBOXまで戻ってきた。本当にすごい子である。
BOXに入ったときに、まさにそのペットボトルを認識している。
そこから、離れた位置で横たわった。ほっとした自分がいる。
そこから水を飲みに体を乗り出したのだが、溺れそうで怖い。
水を飲む音が聞こえたら起きて介護してあげなければと思った。
その後、なんとペットボトルに寄り添う形で寝始めた。
自分が18年猫を飼い続けて理解したのが、猫は知的生命体であるということ。知的生命体の定義は、大好きなスタートレックによれば「コミュニケーションを図ること」であると。
猫は明らかに、我々とコミュニケーションを図っていると感じる。人間がそれに気がつきさえすれば、ボディーランゲージや言葉によってお互い意思疎通し合えるのである。
くろの余命はもはや幾ばくもないので、今晩これから過去を振り返り私が飼い主として至らなかったと思う点など思い出して謝罪と、これまでの感謝と、ふがいない私に与えてくれた大いなるチャンスを失敗せず生かす約束(里親募集猫カフェでたくさんの猫を救う事)を伝えようと計画している。
私が死んだあと、きっと再会することになるので。